2019/06/15 15:03

ストラバイトは走れば溶ける! 走れ走れ ランランラン♪〈犬の巻〉

ストラバイトはジャンプで溶ける! ジャンプジャンプ ピョーンピョン♪〈猫の巻〉

ストラバイト(アルカリ性の尿に析出する結晶)を溶かすのは簡単至極。
尿を一時的・一過性に弱酸性(pH6.86.22)に下げるだけでOKです。
それには、1に
運動、2に肉食(野菜・果物厳禁)、呆気ないほど簡単なんです。
事実に勝る権威なし!  反論・疑問は後回し! 理論なんぞは学者の仕事!
運動励行と肉食遵守こそ、飼い主様にしかできない大切な仕事です。
先ず、お試しあれ!
(ただし、老犬・老猫や臓器不全などの病弱個体を除く)。


ストラバイトの予防は飼い主様の役目です
掛かりつけの主治医の診療方針が最優先されるのはもちろんですが、飼い主様たちの自主的判断が望まれる場面も少なくありません。治療は主治医の仕事、予防は飼い主様の責任です。
また、人の医療では、自分の体の具合を一番良く分かっているのが自分だから、「最良の主治医は自分」という格言があります。
それと同様に格言をマネれば、我が子(犬・猫)の健康の具合を一番良く分かっているのは飼い主様なのだから、
我が子(犬・猫)の最良の主治医は飼い主ということになりましょう。

いつの時代にも権威者の学説や流行の新説を盲信する人々が多いようですが、いつまでも間違った学説や新説に惑わされ続けてはなりますまい。
一番ひどいのが尿のpHの正常値に関する定説です。権威ある専門書などに「尿pHの正常値は弱酸性」と書いてあっても、どうか我が子(犬猫)の尿pHを弱酸性に維持しようなどと変な努力をなさらないでください。事実に勝るものなし。権威ある定説よりも事実の方が大切です。
ヒトもイヌもネコも、健康ならば
尿pHは絶えず目まぐるしく変化するのが正常な姿です。
もう一つ大きな誤解が顕微鏡でなければ見えない微細な尿の結晶です。体内に溜まった不要物質が腎臓を通過して体外へ捨てられる際、不要物質が尿中で析出して微小な結晶になっただけのこと。ごく普通の生理現象にすぎません。しかも、微細結晶は尿と一緒に体外へ排出されてしまうのだから、犬にも猫にも全く無害です。

廃用性萎縮の原則(使われなくなった器官は退化して萎縮する)

動物の筋骨を使わないと、委縮しかけた骨組織から燐酸塩類やカルシウムなどの骨成分が溶けて流れ出てきます。それらは血流に乗って腎臓を通過するので、尿がアルカリ性になります。
また、動かない筋肉からは乳酸が産生されないので尿が酸性にならず、アルカリ性の状態が続いてしまいます。それで、尿の中にストラバイトが出てくるのです。

安全で快適な室内で可愛いがられて平穏に暮らしている犬や猫たちは、“幸せ”であると思われていますが本当はそうじゃありません。
幸せすぎる安楽な生活に浸り切った飼い犬や飼い猫たちは、尿が出なくなる尿閉に苦しめられ、気付くのが遅れれば、尿毒症で24時間以内に死んでしまいます。
特に再発しやすいのが♂猫で、再発防止のため動物病院でペニスを切断することも少なくありません。
尿閉を起こす原因の中で、圧倒的に多いのがストラバイトです。尿閉の前兆現象として、排尿した地面やトイレ砂などの上にキラキラ光る砂粒状の小さな固形物が見えるようになるはずですが、気付かずに見過ごしてしまった飼い主さんも少なからずおられるのではないでしょうか?
(見逃したからとて、誰も責められません。そんなものが出るなんて、普通は知らなくて当然です)

小学校で教わったはずですが、窒素・燐酸・カリウムを「肥料三要素」と呼び、最良の燐酸肥料が骨粉です。骨組織の中には、燐酸カルシウムや燐酸マグネシウムなどの燐酸塩類が豊富に含まれているからです。その骨成分が何かの拍子に溶け出し、血流に乗って腎臓を通過すると尿がアルカリ性になり、骨成分が結合して微細な三重燐酸結晶になり、やがて大きなストラバイトになる。その何かの拍子とは何か?

私の勝手な想像ですが、もしかしたら「廃用性萎縮の原則」に基づくのではなかろうかと思われます。冷暖房完備の快適で安全な室内で暮らしていると、敵と戦ったり獲物を捕ったりするのに不可欠だった四肢の頑丈な筋骨が無用になる。
すると、「廃用性委縮の原則」どおりに、筋肉の衰弱による乳酸産生減少で尿が酸性にならず、痩せ細った骨から燐酸塩類やカルシウムなどの骨成分が溶けて血管に入り、腎臓で濾過される。それ故、尿に燐酸塩類やカルシウムが豊富に含まれてアルカリ性になるのではないかと考えられます。
尿がアルカリ性になったまま酸性にならないと、骨成分の燐酸とアンモニウムとマグネシウムが結合し目に見えない微細な三重燐酸結晶を形成する。この時点で尿を酸性化させずに放置しておくと結晶が巨大化して危険なストラバイトに発達してしまうのではなかろうか?
<
実験して確認しなければ断言できないことなので、残念ながら今のところ疑問符?を外せません>

「ストラバイトの運動療法」は 私(Dr.中島健次)の発明です

2002年秋、いつも酸性の尿を出し続けている自分が気になり、尿のpHアップを目指してクエン酸を試したことがあります。

しかし、さっぱり効果がないので一度に10グラムもの大量を飲んだところ、ようやくpH6.8の尿が出てくれました。嬉しくて嬉しくて、次のような喜びのリポートを当時のブログに載せています。
「万歳! 毎朝毎晩、来る日も来る日もpH5.6以下の赤く染まったpH試験紙しか見てこなかった私にとって、自分の尿がpH試験紙を黄色っぽく発色させたのは初めての体験です。感激、感動、大興奮。ああまだオレの肝臓や腎臓は壊れていないらしい。クエン酸大量摂取の副作用として、今まで経験したことがないほどの激しい下痢と腹痛に苦しみながらも、ホッと安心の溜息が漏れました。そこで、この日はクエン酸の摂取を中止したのですが、どうしてなのか尿pHの上昇が止まりません。そして、午後7時半に、pH7.8という私にとっては驚天動地の凄まじいアルカリ性の尿が出てしまいました。全く予想もしなかった異常事態に慌ておののくのみ。豚カツ(肉が酸性食品)やアンパン(小麦粉と砂糖が酸性食品)を食べても、アルカリ状態の尿のpHに変化なし。このままでは室内暮らしの犬や猫たちと同じに、ストラバイトが出て尿閉になってしまうかもしれない。」(当時は不勉強で人間にはストラバイトが出ないことを知らなかった)
「どうしよう。どうしよう。心配でなかなか寝付けなかったのですが、いつのまにか眠ってしまいました。翌朝、丸一日クエン酸を摂取していなかったにもかかわらず、朝一番尿はpH7.0の中性でした。これではまだストラバイト形成の危険ラインです。一刻も早くpH6.6以下の安全圏内に下げなければならない。どうしよう。どうしたら良いのだろう?」

「良案が思い浮かばないまま、夜明けを待たずに日課の早朝ジョギングに出発。往復8Kmの山道を快調にゆっくり完走し、帰宅後いつものようにトイレで尿pHを測定したところ、何とまあ見事にpH5.4の酸性に下がっていてくれたのです。万歳バンザーイ!
そこで、ピカット閃きました。
 『そうだっ! 尿がアルカリ状態になったままの犬や猫も、走らせれば人間同様に効くに違いない! 乳酸などの疲労物質が筋肉に溜まるほど運動させれば、それらが腎臓を通過して尿に入るから、必ず、酸性の尿が出てくるようになるはずだっ!』
コロンブスの卵みたいな話で、言われてみれば当たり前のことです。ごくごく普通の陳腐な運動療法にすぎませんが、たちまちpHスティックご利用の飼い主様たちに実践され、効果を認証され、今や知る人ぞ知るストラバイト対策の最有力手段として定着しつつあります。

この運動療法は犬だけでなく、もちろん猫にも効果絶大です。たいていの場合、猫じゃらしのようなオモチャで遊ばせながらのジャンプで充分に効果を発揮しますが、もしかすると飼い主様に体力がなく、猫と一緒に遊べないかもしれません。そのときは、押し入れの上段やタンスの上から猫を突き落としてみてください。
高い所から落下して床に着地するときの衝撃が猫の四肢の筋骨を活性化し、酸性の尿が出るようになります。
もっと効果があるのは猫を投げる「投猫療法」です。四肢に奇形がない普通の猫なら、一階の屋根から平気で地面に飛び降ります。でも、マンションの高層階からの飛び降りは危険です。せめて愛猫を抱き上げ、室内で端から端まで投げてあげましょう。たいていの猫は遊びのつもりで喜んで空中を飛んでいきますが、恐がるようなら無理しないでください。無理せずに、廊下の幅ほどの近距離でも充分に効果があります。タンスからの突き落としと同様、投げられた猫が着地する際の衝撃で、必ずストラバイトが防がれます。

私の発明した「ストラバイトの運動療法」はささやかながら、もしも特許庁に方法特許として出願していれば、たぶん間違いなく特許されたことでしょう。そうなれば、ストラバイト対策として犬や猫を運動させるたびに、何がしかの特許使用料を私に払っていただかねばならないことになります。
でも、獣医師の端くれの一人として多少でも獣医業界に貢献したいと願う私は、運動療法の特許を出願しませんでした。したがって、どなたでも自由に運動療法を実行していただけます。これによって、ストラバイト由来の尿閉に苦しむ犬や猫が若干なりとも減少してくれれば、隠居した老獣医師にとって、こんな嬉しいことはございません。