2019/06/15 14:58
ご愛犬・ご愛猫の尿がアルカリ性になると出てくる肉眼可視大のストラバイトは非常に有害で、恐ろしい尿閉や尿毒症の原因になります。それに対し、顕微鏡でなければ見えない微細な結晶(三重燐酸結晶)は、尿と一緒に体外へ流れてしまうので全く無害です。だから、微細な結晶を飼い主様たちが気にする必要はないし、投薬などの処置も無用です。
テレビでヒトの蓚酸カルシウム尿石を取り上げた特集番組を見ました。それによると、ビールを飲み、枝豆を食べれば、誰にでも必ず蓚酸カルシウムの微細な結晶が尿に出てくるそうです。でも、それは一過性の正常な生理現象にすぎず、誰も気にしないし、心配もしていない。その証拠に、枝豆禁止を唱える有識者がいないとのこと。
獣医師向けの専門書にも、目に見えない微細な結晶の多くは無害であると明記されています。ちょっと難しそうに書かれていますが、お役に立つはずなのでぜひ読んでみてください。
「原尿中に濾過されて出た低分子化合物のうち、再吸収されにくいものが溶解域を超え過飽和になって析出したものが結晶である。結晶は血中の余剰物質を生体が恒常性を保つために放出したものと考えられ、その観点に立てば、放出により生体は恒常状態に戻った、あるいは戻ろうとしている状態であって、診断的意義は大きいものとはいえない。しかし、他方では病的状態で産出される結晶もあって、生体内の情報として受けとることもできる。出現した結晶について、どのように理解するかは観察者の考え方、経験などにかかっている」(獣医学臨床シリーズ17『尿検査』、学窓社、1999)
尿閉を起こすストラバイトも例外ではありません。元々は骨組織から血液に移行した燐酸塩類が腎臓で濾過され、膀胱内の尿中で結合して燐酸アンモニウムマグネシウム塩の目に見えない顕微鏡レベルの微細な三重燐酸結晶になり、尿と一緒に排泄されてしまうから犬・猫に無害なものです。
問題なの微細な結晶が尿に出現することではなく、尿がアルカリ性のまま持続してしまうことです。
いったい何時間くらい持続するとイケナイのか、残念ながら未解明のまま手付かずなんですが、たぶん尿pH7.0以上の状態がほんの数時間続くだけで、目に見えない三重燐酸結晶が巨大化して有害なストラバイトに発達すると思われます。
それがストラバイトのままで推移せず、やがてストラバイトの周囲にカルシウムなどの骨成分がこびりついて「ストラバイト抱き込み結石」になってしまったらもう終わりです。動物病院に手術を頼み、我が子(犬猫)のお腹を切開して膀胱の中から結石をかき出してもらうしかありません。
そうならないように、我が子の尿のpHがアルカリ性のままにならず、酸性→アルカリ性→酸性という具合に絶えず上下変動を繰り返すように飼い方を工夫してください。
抜本的な生活習慣改善の前に、とりあえず大急ぎで、アルカリ性の尿を弱酸性~酸性に低下させてあげましょう。酸性化する方法は、いとも簡単。クスリもサプリも特殊なフードも無用です。我が子を無理やり走らせて肉食(生肉・生魚)に徹するだけでOKです。
最後に私の希望的予想を書いておきます。そんなに何十年も先のことではなく、もうじき日本の獣医業界でストラバイトとかストラバイト抱き込み結石などという言葉は使われなくなり、いずれ死語となるに違いなし。何となれば、運動させると共に野菜・果実を食べさせない、たったこれだけのことで室内暮らしの犬と猫を確実に尿閉や尿毒症から守ってあげられるからです。