2019/06/15 14:53

●外に出た犬や猫は野草を食べたがるが、食べても蓚酸カルシウム結石ができない。
○何故なら、生の草に含まれているのが有機蓚酸で、消化管を素通りしてしまうからである。
●しかし、野菜を煮たり焼いたりすると、有機蓚酸が無機蓚酸に変わって消化管から吸収され、血液中の不要物質として腎臓で濾過される。
○このとき、なんらかの事情でカルシウムが尿中に溶けていると、無機蓚酸とカルシウムが結合して蓚酸カルシウムの結晶が析出する。この結晶の大半は尿と一緒に体外へ捨てられるので問題ないが、若干の結晶は膀胱内に残存して大きな蓚酸カルシウム結石になってしまう場合が少なくない。
●野菜だけでなく、果物や豆類(大豆を加熱した豆腐や納豆、小豆を茹でたアンコなど)も 蓚酸カルシウム結石の原料となる(味噌や醤油も要注意かもしれないが、未確認)。


ストラバイト関係のブログを拝見していて2番目に驚いたのは、茹でたキャベツやブロッコリー、豆腐や納豆(枝豆と同様に加熱工程あり)などを食べさせていることです。
拙宅の亡き
柴犬デンは山道などで雑草を食べては、ゲーッゲーと吐き出していました。胃液にまみれた葉っぱを見ると、食いちぎられて丸呑みされていただけです。たまに糞の中に固く丸まった葉っぱが出てきましたが、たぶん全く消化されてないのではないかと思われました(わざわざ広げて調べたことはないけれど…)。
ぜひ一度、我が子(犬・猫)の口を開けて、歯を見てください。葉っぱや穀物を磨りつぶすための臼歯は一本もなく、完全に肉食動物の歯型です。
仮に、犬や猫をA群(肉なし野菜だけ)、B群(野菜なし肉だけ)、C群(肉+野菜)の3グループに分け、どの餌が一番良いのか、成長・生存経過を比較観察してみたらどうなるだろうか?
たぶん、B群>C群の順だと推察されますが、A群は餓死すると思われるので実験は許されますまい。
茹で野菜がイケナイのは、下記の理由からです。

ペット専門雑誌に書かれていたのですが、「散歩の途中でイヌが野草を食べ、ネコが庭におりて芝生などを食べるのは、『生理的要求を満たすための本能である。故に、肉食だけではダメで、バランスよく菜食を採り入れてあげなければいけない』、という意見は正論のように見えて実は非常に不親切です。
何故なら、元々は肉食動物の犬や猫に野菜・穀物などを消化する能力があるか否かの議論はさておき、菜食させるなら生野菜に限ると明確に指定しておく必要があるからです。

どうしてかと言うと、生の野菜と加熱した野菜とは全く別物だからです。すなわち、生の野菜や野草には有機蓚酸が豊富に含まれています。この有機蓚酸は消化力を高める効果があるので、食欲を刺激して元気を回復したい犬や猫が本能的に摂取したがるのだろうと言われいてます。
また、有機蓚酸は動物の消化管から吸収されず、糞と一緒に排泄されてしまうと言われています。それなのに、優しい飼い主さんたちは、生野菜よりも加熱調理した野菜の方がおいしいに違いないと勝手に思い込み、考慮なく安易に加熱野菜を食べさせているのではないでしょうか?

ところが、加熱した野菜にふくまれる蓚酸は、もはや動物に無害な有機蓚酸ではありません。
加熱によって無機蓚酸に変性するため、消化されない無機蓚酸が腸管から吸収されて血流に乗り、腎臓で濾過されて尿に混じります。このとき尿の中にカルシウムが含まれていると、無機蓚酸と結合して蓚酸カルシウムの結晶が作られます。そして、毎日毎晩、無機蓚酸の摂取が続くと、蓚酸カルシウムの結晶どうしが固まり合い、これにいろんな尿成分が結合して大きな膀胱結石になってしまいます。
ですから、我が子(犬・猫)に野菜を食べさせる必要はない。どうしても食べさせたければ生野菜に限るべし、と細かく説明しておかなければ不親切ということになるわけです。

茹で野菜厳禁!を提唱する私に反対し、「野菜は茹でれば安心だ。茹でれば蓚酸が溶けて無くなるから、蓚酸カルシウム結石の原因にはならない」と主張するブログがありました。
そりゃあ多少は、加熱の際に無機蓚酸が溶けるのかもしれない。が、はたして完全に溶けてなくなるのかどうか。信頼できる実験データが欲しいところです。
異論乱立、群盲撫象、何を唱えようと大いに結構だから、茹で野菜安全説を信じるのも信じないのも、飼い主様の勝手で自己責任です。制止する資格など私にはございません。でも、信用できるのは事実のみ。
茹で野菜を食べさせたからと言って、全部が全部100%確実に蓚酸カルシウム結石になるとは限らないのかもしれません。だが、「今まで茹で野菜を食べさせたことは絶対にない、それなのに蓚酸カルシウム結石ができた」という話を私は聞いたことがありません。否、自分がそれを経験したという飼い主様がおられましたら、ぜひ体験談をお寄せいただきたく、お願い申し上げます。
ただし、ペット用缶詰は要注意です。茹で野菜が混入していたかもしれません。かつて、下記のとおり、ウソのようなホントの話がありました。

獣医師会の年次総会や学会、学術講演会などで普通に見かける光景ですが、老眼で縫合針に糸を通せなくなったり、酒毒が手に回って指が震えたりする役立たずの老院長たちは、ロビーや廊下の片隅に群がって今宵の宴会の相談に余念なし(会場に入りさえれば「臨床医レベルアップ教育」の履修単位をもらえるので出席だけはする)。
そこに行けば昔の同級生に会えるので、酒が飲めない私も仲間に入れてもらいます。そこでは様々なウワサや裏話が飛び交っています。
その一つに、「あそこの缶詰を食った犬や猫はイチコロだ、3ヶ月で
石ができる」というウワサを聞きました。まだ拙宅の亡き柴犬デンが元気な頃の話です。気になったので「あそこ」とはどこのメーカーなのか教えてもらいました。エッ、ウソだろう! 周囲を見回すと、皆さんニヤニヤしていて誰も否定しない。どうやら臨床医たちの間では、周知の有名な話だったらしい。

ビックリしたのも当然、現にウチの柴犬に常用していたからです。量販店で一番安価だった。毎日、缶詰1個+人間の食べ残し(飯、肉、魚など)を喜んで食べていました。すでに5年ほど常用しているから、もうすでに尿結石(ストラバイト抱き込み結石か蓚酸カルシウム結石)ができてしまったかもしれない。いったい、この缶詰の何がイケナイのだろう?
茶色っぽい餌からは、食欲をそそる肉の匂いが漂ってきます。当時、ペットフードの原料表示は義務化されていませんでした。イルカだか廃用乳牛だかの肉に、増量材としてニンジンとグリーンピース、それにスイカの皮を刻んだような正体不明の物体が入っているだけ。
これらのどこがイケナイのか。何も分からぬまま、気味が悪いので別のメーカーの缶詰に切り替えました。その7年後、ウチの柴犬デンは一度も動物病院の世話になることなく老衰し、穏やかに死にました(享年14歳半)。
後年、特許pHスティックの通販を開始し、犬や猫の飼い主様たちと盛んにメールのやり取りをするようになってから、昔の「あそこ」を思い出しました。3ヶ月で尿結石ができたというウワサが事実なら、たぶん増量材のせいに違いない。イルカか何かの肉が犬や猫の体内で酸を産生する。その酸を凌駕し得る強力なアルカリ性食品として、缶詰製造工程で加熱された野菜や果皮、豆粉などが大量に混ぜられていたのではなかろうか?
そのため、尿がアルカリ性になったまま低下しないのでストラバイトが出てしまい、さらにカルシウムなどの尿成分が周囲に結合して「ストラバイト抱き込み結石」ができてしまうのではなかろうか。
あるいは、加熱された植物に含まれている無機蓚酸を、連日毎食、摂取し続けたことにより、百発百中の確率で蓚酸カルシウム結石が膀胱内に形成されてしまうのだろうか。

しかし、運動充分だった亡き柴犬デンには血尿もストラバイトも全く無縁でした。察するに、「あそこ」の缶詰で尿結石ができたとされるのは運動不足の犬・猫だけだったのではなかろうか。当時の日本では、都市部をちょっと離れたら犬は繋がず放し飼い、猫は窓から外出自由で、室内に閉じ込められて暮らす犬・猫が珍しかった。そのため、おぞましき造石缶詰は獣医師仲間でのウワサに留まり、テレビや新聞、週刊誌などで騒がれなかったのだろうと思われます。
問題になった「あそこ」のフードメーカーは、今も健在で、当時と同じ商品名のコマーシャルを年がら年中、テレビで見せられています。恐らく、獣医師仲間のウワサを察知し、素早く缶詰内容を変更したんでしょうね。
正義感に駆られて私が指弾などしていたら、足をすくわれ恥をかき、名誉毀損・営業妨害・賠償請求などと告訴されていたかもしれない。メーカーの製品を良いの悪いのと批評しない方が無難だという教訓を、改めて痛感した次第です。こういう隠れた事例を知っているからこそ、隠居の分際でありながら、私は声を大にして「
茹で野菜厳禁!」を唱えることができるのです。

前記臨床獣医師の仲間内で、もう一つ別のウワサが密かに囁かれていました。「このごろ、不思議なことに蓚酸カルシウムの膀胱結石が目立つようになった。どうやら○○の連用が関係しているらしい」とのこと。
そもそも、鍾乳洞などのように石灰層を通過した水は、カルシウムが豊富なため強アルカリ性になります。それをヒントにした逆転の発想で、犬や猫の尿にカルシウムが少なければ、尿pHは酸性になるはずだ。それにはカルシウム含有量の少ない餌を食べさせれば良いはずだ、と欧米で誰かが考えたようです。
敗戦国の悲しさ、欧米の発明なら何でもありがたがる風潮に影響され、日本の獣医業界でも輸入品の『低カルシウムを特徴とする○○』をストラバイトの診療に採用しました。そのため、ストラバイトトが出た犬や猫が来院すると、処方食と称して輸入品○○を飼い主に勧める。まずくて我が子が嫌がっても、主治医に指示されたとおり無理やり食べさせ続ける。やがて、食後の尿が酸性化し、血尿が治り、顕微鏡でなければ見えない微細なストラバイトも姿を消す。
ああ効いてくれた、良かった、バンザイ。飼い主様も主治医もホッと安心します。
ところが、その時点で止めておけば問題ないのに、高価な○○を残すのはもったいないとか、再発するのが心配だからとの理由で、さらに○○を食べさせ続ける飼い主さんが少なくないらしい。すると、突然、我が子の尿がpH5.0近くまでストンと急降下してしまう。この変化が、蓚酸カルシウムによる膀胱結石形成の危険信号なんだそうです。

何故そうなるのか、老院長たちに聞いてみました。長期連用で○○が効き過ぎると、動物の体内でカルシウムが不足し、尿の中にカルシウムが出なくなるのではなかろうか。それで尿pHが急降下するのではなかろうか、とのこと。ま、それはそうかもしれない。でも、そんなことは誰でも想像できる。そうじゃなくて、尿pHが急降下することと蓚酸カルシウム結石との因果関係は何か?
残念ながら返答なし。うかつなことは喋れないのか。本当に何もご存知ないのか。かくなる上は、しょうがない。私が自分で考えるしかない。でも、いくら考えても○○と蓚酸カルシウム結石が結び付きません。結局、辿り着いた結論は単純明快。「蓚酸カルシウム結石は○○と関係ない。別のところから由来しているに違いなし」。
それは何か? たぶん、無機蓚酸たっぷりの茹で野菜ではなかろうか?
そこで、私の推察の正否を確かめるため、片っ端から飼い主様たちに訊ね回りました。特許pHスティックご利用の飼い主様の中から、○○を食べさせているとのメールをくださった方々お一人お一人に返信し、「もしかして茹で野菜を食べさせておられませんか?」と質問させていただいたのです。
特許pHスティックご利用の飼い主様から寄せられた○○関係の相談は、たとえば次のようなものです(下記メール発信者は、
尿pHが目まぐるしく変化してこそ正常という事実に納得できず、酸性~弱酸性に維持することが『pH安定』で望ましき最適状態なのだと盲信されているようですが、いったん頭に染み付いた固定観念を覆すのは極めて難しいらしい)。

「中島先生 教えてください。3年程前に膀胱結石で手術したパピヨンの雄を飼っています。手術以来、食事を○○などに変え、毎月一回動物病院で尿検査を行い、pHも安定した値を保っていました。しかし、3年たった今、再び血尿が出てしまい、抗生剤でも治らず、レントゲンを撮ったら膀胱と左右両方の腎臓に結石が写っていました。最適なpHを保っていただけに、何が原因か分からず悩んでいます。確かに水を飲む量は少ないのですが…」

「中島先生 はじめまして。マルチーズ♀2歳の愛犬が膀胱炎になったのですが、出血等の症状がひどくなり、病院で調べてもらったらアルカリ尿(pH8)とわかり、潜血が出ているので○○と抗生剤で治療しました。先日の尿検査ではpH6に下がっていましたが、院長先生から○○は続けるようにと言われました。でも、『pHの下がりすぎも怖い』と言われましたので、自分で尿検査をするためpHスティックを購入します」

30人以上の飼い主さんたちに質問させていただき、全員からご回答いただきました。どんピシャリ、見事的中。お一人の例外もなく、皆さん良かれと信じて、我が子に茹で野菜を与え続けておられたのです。これで確信を抱き、○○関連のメールをいただくと、私は次のように返信しております。

「ご愛犬の尿のpH検査のために特許pHスティックをご利用くださり誠にありがとうございます。
もしかして、ご愛犬は野菜や果物が好きなのではないですか?
そうであるなら、今日から早速、運動励行+肉食オンリー(野菜・果物厳禁)を試してみられますよう、お勧め申し上げます。敬具 Dr.中島健次拝」

「Dr.中島先生 ご返信ありがとうございました。我が家の愛犬は、おっしゃるとおり野菜や果物が大好きです。特に茹でたブロッコリーには目がないです。膀胱炎と何か関係があるのでしょうか?」

そもそも、蓚酸カルシウム結石は尿のpHに関係なく、酸性でもアルカリ性でも形成されると獣医学生向けの教科書に書かれています。それなのに何故、尿をpH6.4前後の弱酸性にする輸入○○食を連用していると、突然、ストンと尿がpH5.6以下に酸性化してしまい、それが何故、蓚酸カルシウム結石が膀胱などに形成されたサインになるのか、私には因果関係を考察できません。
でも、そんな理論は偉い学者先生に任せておきましょうよ。飼い主さんにとって一番大事なのは、学理を勉強することなんかではないはずです。ストラバイトの恐怖から我が子(犬・猫)を救うと共に、余計な苦労(蓚酸カルシウム結石)を背負わせないようにしてあげること。
それには格別の努力を要しません。
茹で野菜を食べさせない(野菜には枝豆、豆腐、納豆、小豆のアンコ、野菜入りの肉缶詰なども含む)。これだけで確実に問題解決です。

複雑多岐な迷路に踏み入ったら、原点に戻る。太古以来、オオカミやライオンは獲物を追って全力で走り、血だらけの生肉を食べて何万年も生き続けてきました。森林やサバンナで「茹で野菜」を食べる機会はないし、食べる必要もなかったのです(倒した獲物の消化管を食べることで植物も摂取できたが)。
人間に飼われて家畜化した犬・猫はオオカミやライオンと違う。クマと同じ雑食動物で栄養学的に野菜・果物が不可欠だとする学説もあるようです。でも、むやみに盲信するなかれ。山野に捨てられた犬や猫たちが怪我で動けなくなったとき、豊富な草やドングリに囲まれながらも飢えて衰弱し、キツネやタヌキなどの餌になるのは、野菜・果物が栄養にならないのです。

我が子(犬・猫)が健康で元気なときなら、何を食べさせようと構わないのかもしれません。けれど、せめてストラバイトの恐怖に脅えてる今だけでも、茹で野菜を食べさせるのは止めましょう。百害あって一利なしです。尿をアルカリ性にしてストラバイトを作るだけでなく、輸入〇〇を連用して蓚酸カルシウム結石まで作りかねないからです。どうか、くれぐれも、変な俗信に惑わされることなかれ。
人間も犬も猫も、若くて元気で健康なときは尿pHが目まぐるしく変化し、一時的に酸性になったりアルカリ性になったりの上昇・下降変動を繰り返しています。それが正常な尿pHの正常な姿です。
それなのに、元気だった我が子(犬・猫)に思いがけず、
ストラバイト出現⇒輸入○○を長期連用⇒尿pHが低下したまま上昇せず⇒膀胱に蓚酸カルシウム結石、という定型的な不運に見舞われた飼い主様たちに質問します。
あなたがたの中で、我が子に茹で野菜(枝豆などの豆類を含む)はもちろん、生の野菜や果物なども全く食べさせたことがないと明言できる方がおられましたら、是非ご一報願います。
蓚酸カルシウム結石の原因が茹で野菜にあるとする中島説と、生野菜も茹で野菜も関係ないとする野菜必須論者のどちらが正しいか。多数の事例を集め、茹で野菜有無の比率を見てみたい。数千:0か、数万:1か? 必ず我が中島説に軍配が上がるに違いありません。