2019/06/13 10:06

〈No.5K.I.様(東京) 片目の石松♂11歳2ヵ月ほか愛猫たち

片目の石松石松お仕事中

「病院でストラバイトと言われた石松(♂11歳)です。お察しのとおり、片目なので「石松」です。こうや
って私の仕事の邪魔をして、私に休憩させるのが彼の仕事です。
 1歳半の時に尿結晶で病院に掛かって以来、療養食を3日切らすと尿が出にくくなり病院通いでした。元々痩せた体型の上に生後半年くらいで去勢をした(私がその時期にすると決めたわけじゃありません)ため尿道が細いからと言われました。
 他に2匹飼っており、彼らは市販の安いペットフードを与えているのですが、尿結晶症と言われた子は療養食(色々与えましたがどれも)が嫌いで、飼い主の目を盗んでは普通食を食べています。 元々、食の細い子なんですが、大好きなお肉やお魚は与えてはいけないと言われて心を鬼にしていたのに。
もし、好きなものを食べさせてやれて、彼が元気で暮らせるならどんなにいいでしょう。

石松 もん茶

石松(右)もん茶(左)の真剣勝負

普段はおっとりしていて身体も細く、どこか抜けているような石松ですが、健常で身体も大きい♂猫のもん茶に対して、「リーダーの座は譲らないぞ」という気概がうかがえ、親バカの私にとってはとても誇らしい写真です。
 雄猫が二匹なので始終バトルしていますし、細い子なので運動量は充分だと思うのですが、pHを調べながら少ないようならもっと遊んでやろうと思います。
 ただ、ひとつ気になることがあります。これは中島先生の専門外かもしれませんし、実際、診察しないと分からないことかもしれませんが・・・。
 石松は尿結晶以外にも年に2回くらい、時期に関係なく肌がただれ、掻きまくって毛が抜け、身体のいたるところに浸潤液が滲むような傷ができます。
 これまであちこちの病院(5~6軒)に連れて行きましたが、アレルギーだ、ホルモンバランスだ、ストレスだ、体質だ、etc.と診断は様々。注射や飲み薬、塗り薬、治療も様々でしたが、どの治療も完治までに1~2ヶ月かかりました。もちろん治療費もかなりかかりました。
 何の治療をしなくても1~2ヶ月で治るので、今では連れて行くのをやめています。傷になった部分も消毒した方がいい、消毒すると刺激でよけいに掻いたり舐めたりするのでしないほうがいい、薬を塗ったほうがいい、乾燥させたほうがいい、と病院によって様々。どの治療方法も結果は何もしないのと同じなので、何もしていません。
 こういう子の場合、尿のpHだけで肉食に変更するのはどうなんだろうとも思っています。
 ただ、療養食は肌のただれから薦められたものではありませんし、療養食を食べていてもなるときはなります。中島先生に何かお考えがあればお聞かせ願えれば幸いです。
 念のために生い立ちを追記いたします。野良猫の母親が生後3~4週で目の病気がひどくなった2匹(雄・雌)を育児放棄したのを拾いました。完全に溶けていた片目は摘出、もう一方も膜が貼ってます(雌のほうは片目に膜、もう片方は健常です)。獣医さんにはほとんど見えないはずと言われましたが、遠近感は怪しいものの、虫を追ったりおもちゃに夢中になる様子を見ていると、そうでもないんじゃないかと思っています。長々と失礼いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。」K.I.


K.I.様 お尋ねの件、私は次のように考えます。
>
年に2回くらい、時期に関係なく肌がただれ、掻きまくって毛が抜け
●私は研究分野の獣医師だったので臨床経験がなく、無責任なことしか申せませんが、こういう症状はヒトのアトピー性皮膚炎と同じなのでは・・・? そうなら、尿がアルカリ性だったのだと推察されます。

>
雄が二匹なので始終バトルしていますし、細い子なので運動量は充分だと思うのですが
●そうかもしれません。でも、去勢した♂の動きは鈍重で、不活発な場合が多いのも事実です。はたして本当に運動十分だったかどうか、尿のpHチェックをしてみなければ確認できません。

>
尿のpHだけで肉食に変更するのはどうなんだろうとも
●ご愛猫は11歳すぎなので、もう運動強制は禁物です。運動に代わる次善の手段が肉食ですが、1歳半のときに無害な尿結晶を口実に無用な○○食を指示されてしまったのは、不運だったとしか申し様なし。ご愛猫が肉や魚を好きなら、それを常食にさせてあげては如何でしょうか?
 瀬戸内海のどっかの島の漁村の猫たちは、生涯、イワシなどの生魚だけを食べているそうです。肉や魚が猫に有害なら、とっくの昔に猫という動物は絶滅しているはずです。
 ヒトや猫の尿に結晶が出るのは日常的な普通の生理現象にすぎないし、肉や魚などの酸性食品を食べれば必ず尿が一過性に酸性化します。
 ご参考までに、80年以上も昔に明らかにされていた酸性・アルカリ性食品の古典的資料を同封しておきます。これらの食品を食べて死ぬヒトや猫はいません。敬具」    Dr.中島健次拝


Dr.中島 健次 様  早々に大変ご丁寧なお返事をいただきありがとうございました。
>
運動に代わる次善の手段が肉食ですが、1歳半の
>
ときに無害な尿結晶を口実に無用な○○食を指示
>
されてしまったのは、不運だったとしか申し様なし。
>
ご愛猫が肉や魚を好きなら、それを常食にさせてあげ
>
ては如何でしょうか?
という中島先生のご意見に涙が出ました。

 石松は食が細く、他の子たちの半分も食べないような子なのに、食べたくない療養食を強制され、大好きなお肉やお魚をもらえる日にも、彼だけは他の子の1/3程度。大嫌いな療養食にほんの一つまみしかのっていないのに、その日だけはモリモリ食べています。
それさえ「与えてはいけない物」と思っていたので、幸せそうな姿に心から喜ぶことができずにいました。
 私は子供の頃から動物が大好きでした。家で犬も飼っていましたし、近所の野良猫、野良犬とも仲良しでした。私は問題のある子供だったので、人よりも犬猫に癒され、愛情を感じていました。
 今は猫しか飼っていませんが、いろんな動物を世話してきましたし、今でも「毛の生えている動くもの」はなんだって大好きです。世の中で「犬派」「猫派」と分かれるのが全く理解できません。
 そんな自他共に認める大の動物好きの私ですが、日頃から、人が他の動物を「ペット」として飼うということに疑問を抱いています。
 他人様への迷惑、事故や病気の危険回避から家の中に閉じ込め、望まぬ妊娠、出産を避けるために、また、発情期やスプレー行為を嫌い、去勢・避妊手術をし、種族保存という生物の基本的な本能を奪う。
 確かに野良よりは長生きする確率が遥かに高いのですが、本来あるべき姿をことごとく奪われた彼ら彼女らは本当に幸せなんでしょうか。
 ウチの子は先のメールでお伝えしたとおり目が不自由です。外ではとても無事に生きていけるとは思えません。私が保護しなかったら両目を失っていたでしょうし、そうであれば1ヶ月も生きれなかったのではないでしょうか。
 それでも私は疑問を抱きます。飢えや寒暖、怪我や病気に苦しみながらも、自然のままに天命を全うする1ヶ月よりも、食事や快適温度、健康や安全と引き換えに、人間の勝手で本能まで奪われ全て管理される10年のほうが幸せだと思うのはあくまでも人間の価値観じゃないでしょうか。
 飢えや寒さ、病気や怪我による痛みは確かに苦しいでしょうが、他と比べたり、過去を振り返って無駄に苦しむのは人間だけです。「たら・れば」など考える能力のない彼らは、痛みや苦しみを全身で受け止め、今自分にできる最善(と考える)の方法でそれらと闘うのみです。
 「可哀想だけど、○○よりは幸せだ」の「○○」は彼らの頭にはありません。
 私は私の勝手でこの子達を自分の生活に取り入れ、人間の都合に合わせるよう強制している自分を忘れてはいけないと思っています。もちろん、だからと言って「ペット様」に仕える気もありません。
ここまで不自然を押し付けておいておこがましいですが、できるだけあるべき姿で過ごせるようにと思っています。
 シャンプーなんて一切しません。ブラッシングさえ喚毛期にねだられるとする程度。
 犬や猫に服を着せた写真を自慢げに披露する方を内心軽蔑いたします。雨の日にレインコートや長靴を履かされた犬を見ると気の毒に思います。旅行の際にペットホテルに預けることもしません。状態を観察して無駄だと判断した治療も受けさせません。
 そういう方から見たら、手もかけず、お金もかけない私は中途半端な飼い主に映るのかもしれません。 ですが、私は私なりにとても真剣に動物と暮らすことを考えているつもりです。
 そんな私にとって、愛猫に好きなものを食べさせられるんだということが、どれほど嬉しいことかお察しいただけるでしょうか。
 「涙が出た」というのは決して美辞麗句や大袈裟な表現ではありません。本当にお肉やお魚を与えもあの子が病気にならなければどれほど幸せか。
 すみません。先生の説を疑っているわけではありませんが、どんな犬猫にも100%当てはまるかは分からないと思っています。
 中にはお肉やお魚がダメな個体もいるのかもしれません。その子たちは自然の中では淘汰されるだけで、少数であれば種族が絶滅しないのは当然です。種族としてはそれでよいのだと思いますが、私の猫は淘汰させるわけにはいきません。私も勝手な人間ですね。

 先生は今まで言われなかった説、いや、むしろ昔は自然に存在していたことで、妙な知識から否定されるようになったことを改めて根拠を示し、「正論」として打ち立てられました。それだけでも素晴らしと思うのですが、更にすごいことは、それを先生の私腹を肥やすことに使わず、飼い主自らが確認できるpHスティックという簡単で安価な手立てを提供されていることが本当に素晴らしいと感嘆する思いです。
 先生の本業はスティックを売ることではないと思いますが、例え本業でなくても儲けようと思えばできるところでなさらない。人間とは欲深いもの。なかなかどうしてできることではないと思います。

 たかがpH試験紙なんて化学の場ではそこら中に転がっている物ですので、いかにもという箱に入れ、いかにもという名前をつけて、いかにもという説明をつければ倍以上の値段で売れるでしょう。実際、そのようなご商売をされてる方は山ほど居られます。
 先生はそんなことは欠片も考えておられない。それどころか、送料無料、初めての注文でも後払い。恐らく代金を払われない人も居られるのではないかと思います。それでもその姿勢を変えようとなさらない。心から素晴らしいと思います。
 先生の説に尤もだと思わせるものがあったこと、また、それが自分の志向に合っていたことはもちろんですが、それ以前に、先生のそのような姿勢に感銘を受け、10年間も信じていた方法を捨て、先生に従ってみようと思った次第です。
 長くなってしまってすみませんでした。中島先生のサイトのあちこちで「そうだよ!」「これだよ!」と叫びたくなるような感動を受けたので、その興奮が多弁にさせるのです。どうかお許しください。
 最後に、私は日頃から仕事を愛し、努力を金銭に換算しないようにしておりますが、先生のように物ではなく人柄を買われる人間になりたいと、改めて深く感じさせてくださったことに感謝申上げます。ありがとうございました。」    K.I.

 「K.I.様、 読み辛いメールが多い中で久しぶりに本物の見事な日本語に遭遇し、大変嬉しく存じました。敬意を表させていただきます。私が始めたpHスティックの素人っぽい通販に関し、意外なほどの買い被りをなされておられますが、実のところは私がただの世間知らずで幼稚なお人善しにすぎないだけのことです。
 問題のご愛猫に大好きな肉や魚を与えることを躊躇われるのも無理ありません。絶対に安全だと私も保証できませんし、保証できる者は誰もいないと思います。
 でも、無責任ながら、私の正直な気持ちを申せば、片目ながら11年間も生かしてもらって、石松は何と幸せな猫よ!
  敬具」                      Dr.中島健次拝


Dr.中島 健次 様
 私ごときの日本語に、過大な評価をいただき恐縮しております。実は、メールを送信した後、先生のブログを読みに行き、リンゴ・スター様の日本語をお褒めになっている記事を拝見しました。
 慌てて送信済みアイテムから自分の出したメールを開きなおし、興奮そのままにいろんなことを吐き出すような文章に、冷や汗の出る思いをいたしました。
 お役に立てるのでしたら、使っていただくのは一向に構いません。むしろ光栄にさえ感じております。
 ですが、元々、中島先生という、どのようなお考えの方かあらかじめ分かっている個人様に宛てたメールで、不特定多数の読者様を想定した文章ではございません。どうぞよろしくお願いいたします。拙宅の愛猫達の写真を同封させていただきました。

 肉食への変更について
 大切な家族のことですので慎重に進めようと私なりに計画を立てました。pHスティックが届きましたら、まずは今までどおりの食事で数値をチェックします。ただ、私は仕事をしているので、毎日全頭チェックするのは難しいかもですが。
 結晶が大きくなって尿道が詰まり気味になった折、獣医さんに習った膀胱の状態チェック法と、尿の押し出し術が役に立つかもしれません。また、先生のサイトにあった仰向けに寝かせる方法も練習しておくつもりです。
 現在の数値がある程度認識できたら、2回の食事の1回を肉食に変更してみます。朝夕、数値の高い時間が偏っているようでしたら、その時間に近い方の食事を(そうすると石松はおそらく肉食の方しか食べなくなると思いますが)。
 尿pHの数字だけではなく、石松の状態を観察し、問題がないようでしたら、完全肉食に変更しようと思います。 それが叶えば、全頭、どんなに喜ぶでしょう!
 丁度、石松は先ごろから恒例の肌のただれが出始めていますので、食事によってそちらも改善が見られれば。。。

 あまり大きな期待をすると期待はずれだったときにショックが大きいとは思いますが、 どうせやってみなければ分からないこと。楽しい思いができるうちにせいぜいしておこうと思ったり、です。
 以前やっていたブログに他の記事と併せて、猫の記事もたくさん載せていたのですが、カテゴリーがあまりにも多義にわたり煩雑化してしまったので建て直しを計り、閉鎖いたしました。
 前々から猫を含め動物に関する記事だけをまとめた場所を作ろうと思っていたので、この機会に適当な場所を作り、今回のこの計画を記録しようと思っております。ブログにするか、HPにするかまだ検討中ですが、立ち上げの際にはお知らせいたします。
 その折に改めてお願い申上げますが、よろしければ先生のサイトへのリンクを貼らせていただければと思っております。
 普段書く文章は、顔文字を使ったラフな文章です。ご一読いただいて了解していただけるようでしたら、どうぞよろしくお願いいたします。

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片目ながら11年間も生かしてもらって、
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石松は何と幸せな猫よ! もう良いんじゃないの?
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好きなものを好きなだけ食べさせてあげて、それで
>
死んだって・・・。

 大切な家族なので、死んだっていいとは思えません。ですが、このお言葉にはとても深い温かみを感じました。
 ただ生命を繋げることだけが動物を想うことではない、そういった本当に動物の立場、気持ちを考えておられる方だからこその言葉だと思います。
 私の飼いかたは絶対間違いない、一番だ、などと、大それた自信を全く持てずにいる私には、とても大きなエールにも思えました。ありがとうございました。
 もちろん、肉食への変更は全て自分の責任で行います。疑問が浮かべば、お言葉に甘えてご指導を仰ぐことはあるかと存じますが、あくまでも決定を下すのは私です。何がありましても先生へ苦情を述べるなどはいたしません。それでは。」        K.I